No.027 ロイヤルウースターのフルーツペインター

1920年代に黄金期を迎えたロイヤルウースターのフルーツペインター軍団。彼らはロイヤルウースター窯の長い歴史を通じ、最も優れた作品群を残したとされ、ベース&テーブルウエアをフルーツペイントで仕上げるフルーツペインターの頂点を築いたペインター達です。その長きに渡る高レベルな陶磁器生産活動の中で最もクォリティーの高いフルーツペインティングをベース&テーブルウエアに残し、ペインター一人一人が優れた才能を発揮しました。そのグループの一人HoracePriceが描いたフルーツペイントのテーブルウエアセットをご紹介します。

ラウンドプレート&スクエアプレート&オーバルプレート&コンポートに印されたH.HPriceのサイン。彼の描くフルーツ画はその鋭い感性とフルーツを描く技術の高さをロイヤルウースターの経営陣から称賛されたペインターです。

1898年に生まれ1912年からロイヤルウースターで働き始めたPriceは生涯を通じロイヤルウースターにて一心に働きました。惜しくも第一次大戦に従軍した際に右手の指を失いますが、復帰後もその技量は何ら変わらず描かれるフルーツ画に大きな称賛を得ています。フルーツペインターとして一筋にフルーツ画を描き続け、後にウースターのフラワーペイター部門にても力量を発揮する美的センスの高いペインターでした。

ロイヤルウースターが持ち得た徒弟制度により1920年代は様々な才能が結集した頃でもあり、英国内の陶磁器工房のなかで群を抜く実力ある工房に成長した黄金期です。しかし第二次世界大戦が勃発する頃には多くのペインターが工房を離れ、職を失ないます。それまでの注文数も減り続け1930年以降は経営に困窮する状況でした。その中でもロイヤルアカデミーに出展し画家に転進し活躍したWalterHaroldAustinやHarryAustinというフルーツペインターもおりますが、多くのペインターは職を離れ職探しに奮闘します。

ちなみに晩年、フォアマンとしてロイヤルウースターに大いに貢献し後進の指導にもあたった Price は一生を通じロイヤルウースターとともに歩んだフルーツペインターです。1965年にこの世を去るまで Horace Price はウースターの徒弟制度により後進の才能を指導し続けたロイヤルースターの伝説的なフルーツペインターの一人です。

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